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減量 2025.07.10 NEW
「肥満が原因で糖尿病になる?その仕組みと予防法」
肥満と糖尿病って関係あるの?
肥満と糖尿病は非常に密接な関係にあり、特に2型糖尿病の発症と進行において、肥満は最も重要なリスク因子の一つとされています。肥満が糖尿病を引き起こすメカニズムは多岐にわたり、単なる体重増加以上の影響が体内で起こっています。
肥満が糖尿病を引き起こすメカニズム
肥満は2型糖尿病の大きな原因のひとつです。特に、お腹まわりの脂肪(内臓脂肪)が増えると、血糖値をコントロールするホルモン「インスリン」が効きにくくなり、糖尿病のリスクが高まります。
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1.インスリン抵抗性の増大
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◦内臓脂肪の蓄積: 肥満、特に内臓脂肪型肥満(お腹周りに脂肪が蓄積するタイプ)は、糖尿病発症のリスクを著しく高めます。内臓脂肪は、単にエネルギーを貯蔵するだけでなく、様々な生理活性物質(アディポカイン)を分泌する「内分泌臓器」としての役割を持っています。
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◦悪玉アディポカインの増加: 内臓脂肪が過剰に蓄積すると、TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)、IL-6(インターロイキン6)、レジスチンなどの炎症性サイトカイン(悪玉アディポカイン)の分泌が増加します。これらの物質は、肝臓や筋肉などの細胞でインスリンの働きを妨げ、血糖を取り込む能力を低下させます。これが「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態です。
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◦善玉アディポカインの減少: 一方で、インスリン感受性を高める働きを持つアディポネクチン(善玉アディポカイン)の分泌は、肥満によって減少します。これにより、さらにインスリン抵抗性が悪化します。
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◦遊離脂肪酸の増加: 肥満によって脂肪細胞が肥大化すると、血中の遊離脂肪酸(FFA)が増加します。過剰なFFAは、肝臓での糖新生(ブドウ糖を作る働き)を促進し、筋肉でのブドウ糖利用を阻害するため、血糖値が上昇しやすくなります。
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2.膵臓β細胞の疲弊
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◦インスリン抵抗性が生じると、体は血糖値を正常に保つために、膵臓のβ細胞からより多くのインスリンを分泌しようとします(代償性高インスリン血症)。
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◦しかし、この状態が長く続くと、β細胞は過剰なインスリン分泌によって疲弊し、最終的にはインスリン分泌能力が低下してしまいます。インスリンの分泌が血糖値の上昇に追いつかなくなると、慢性的に高血糖状態となり、糖尿病が発症します。
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3.慢性炎症
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◦肥満は、脂肪組織からの炎症性サイトカインの分泌により、全身性の慢性微弱炎症を引き起こします。この慢性炎症は、インスリン抵抗性を悪化させるだけでなく、膵臓のβ細胞に直接的なダメージを与え、その機能低下を促進すると考えられています。
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4.脂質代謝異常
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◦肥満では、中性脂肪の増加やHDLコレステロールの低下といった脂質代謝異常を合併しやすいです。これらの異常は、インスリン抵抗性をさらに悪化させるだけでなく、動脈硬化を進行させ、心血管疾患のリスクを高めます。
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肥満の種類と糖尿病リスク
肥満には大きく分けて内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満がありますが、糖尿病のリスクに大きく関わるのは内臓脂肪型肥満です。
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●内臓脂肪型肥満(りんご型肥満):
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◦腹部の内臓の周りに脂肪が蓄積するタイプで、男性や閉経後の女性に多く見られます。
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◦内臓脂肪は活性が高く、先述した悪玉アディポカインを分泌しやすいため、インスリン抵抗性を引き起こしやすく、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病と強く関連します。
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◦これら複数の異常が合併した状態がメタボリックシンドロームと呼ばれ、糖尿病や心血管疾患のリスクをさらに高めます。
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●皮下脂肪型肥満(洋なし型肥満):
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◦お尻や太ももなど、皮膚の下に脂肪が蓄積するタイプで、女性に多く見られます。
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◦内臓脂肪に比べて悪玉アディポカインの分泌が少ないため、糖尿病のリスクは内臓脂肪型肥満ほど高くありませんが、高度な肥満であればやはりリスクは上昇します。
糖尿病治療における減量の重要性
肥満を伴う2型糖尿病患者にとって、減量は最も効果的な治療法の一つであり、しばしば「特効薬」とも言われます。
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●インスリン抵抗性の改善: 減量によって内臓脂肪が減少すると、インスリン抵抗性が改善し、インスリンの効き目が良くなります。これにより、血糖コントロールが改善し、インスリンの分泌量を減らすことができるため、膵臓の負担も軽減されます。
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●β細胞機能の温存: 早期に減量を行い、血糖を良好にコントロールすることで、膵臓β細胞の疲弊を防ぎ、その機能を温存することに繋がります。
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●合併症の予防・改善: 減量は、糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害など)の進行を抑制するだけでなく、高血圧や脂質異常症といった他の生活習慣病も改善し、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを低減します。
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●薬物療法の減量・中止: 減量に成功し、血糖コントロールが改善すれば、糖尿病治療薬の量を減らしたり、場合によっては薬物療法を中止できることもあります。
減量のためのアプローチ
肥満を伴う糖尿病患者の減量には、継続的な生活習慣の改善が不可欠です。
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●食事療法:
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◦総エネルギー摂取量の制限: カロリーオーバーにならないよう、適切な摂取量を守ります。
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◦バランスの取れた食事: 炭水化物、タンパク質、脂質のバランスを考慮し、野菜や食物繊維を積極的に摂取します。
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◦食べる順番: 野菜から先に食べることで血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
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◦ゆっくり食べる: 満腹感を得やすく、食べ過ぎを防ぎます。
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●運動療法:
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◦有酸素運動: ウォーキング、ジョギング、水泳など、脂肪燃焼効果のある運動を定期的に行います。
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◦筋力トレーニング: 筋肉量を増やすことで基礎代謝が上がり、痩せやすい体質になります。
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●薬物療法:
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近年では、体重減少効果や腎保護効果も期待できるSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬などが、肥満を伴う2型糖尿病患者の治療選択肢として注目されています。
➡GLP-1阻害薬(マンジャロ・リベルサス)・SGLT2阻害薬について
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●減量手術(肥満外科手術): 高度肥満で、かつ生活習慣の改善だけでは体重管理が困難な場合に検討されることがあります。劇的な体重減少とともに、糖尿病の寛解(薬物療法が不要になる状態)も期待できます。
糖尿病の治療薬ってどんなものがあるの?
糖尿病治療には、血糖値をコントロールしながら、体重の管理もできる薬があります。
🟢 SGLT2阻害薬(尿から糖を出す薬)
- 💡 飲み薬タイプ(毎日)
- 💡 糖を尿に流して血糖値を下げる
- 💡 体重減少効果あり!
- 📌 副作用 → 膀胱炎等になりやすいので、水分補給が大事!
🟢 マンジャロ(チルゼパチド)
- 💡 週1回の注射タイプ
- 💡 食欲を抑えて、血糖値を下げる
- 💡 体重をしっかり減らしたい人向け!
- 📌 副作用 → はじめは少し吐き気が出ることも
🟢 リベルサス(セマグルチド)
- 💡 飲み薬タイプ(毎日)
- 💡 食欲を抑えて、インスリンの働きを助ける
- 💡 注射が苦手な人でもOK!
- 📌 副作用 → 吐き気や胃もたれが出ることも
🟢 メトホルミン(昔からある定番の薬)
- 💡 飲み薬タイプ(毎日)
- 💡 肝臓での糖の作られ方を調整し、血糖値を安定化
- 💡 体重が増えにくい!
- 📌 副作用 → お腹がゆるくなることがあるので、最初は少量から
4つの薬の比較表
定期的な診察と、検査等を組み合わせて、安全に治療しましょう。
➡「マンジャロ・リベルサス・SGLT2阻害薬の違いとは?効果・副作用・選び方を解説」
➡「医師と一緒に始める減量プログラム|自由診療で無理なく体重管理|医学的ダイエットという選択」