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心臓・腎臓 2025.07.08 NEW
心腎連関に対する治療戦略と知見
心腎連関の治療は、単に心臓や腎臓の個別の治療にとどまらず、両臓器の相互作用を考慮した包括的なアプローチが求められます。
(1) 従来の治療と薬剤
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●RAAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB): レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化を抑制し、血圧低下、心臓・腎臓の保護効果が期待されます。心不全や慢性腎臓病の治療の根幹となる薬剤です。
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●β遮断薬: 交感神経系の過剰な活性化を抑制し、心臓の負担を軽減します。
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●利尿薬: 体液過剰による心臓への負担や、腎うっ血を改善します。ただし、過度の利尿は腎血流を低下させる可能性もあるため、慎重な使用が必要です。
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●ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA): アルドステロンの作用を抑制し、体液貯留の改善や心臓・腎臓の線維化抑制に効果を発揮します。
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●高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理: これらは心臓と腎臓の両方に悪影響を与えるため、厳格な血圧・血糖・脂質管理が不可欠です。
(2) 最新の治療と注目される薬剤
近年、心腎連関の病態生理をより深く理解することで、新たな治療薬が登場し、その治療戦略は大きく変化しています。
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●SGLT2阻害薬(Sodium-Glucose Co-transporter 2 Inhibitors)
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もともと糖尿病治療薬として開発されましたが、その後の大規模臨床試験で、心不全の悪化抑制、心血管イベントの減少、腎機能低下の抑制という、糖尿病の有無にかかわらず心臓と腎臓の両方に保護効果があることが示され、大きな注目を集めています。
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メカニズム: 腎臓でのブドウ糖とナトリウムの再吸収を抑制し、尿糖・尿ナトリウム排泄を促進します。これにより、体液量や血圧の低下、腎臓への負担軽減、そして直接的な心臓・腎臓保護作用(炎症抑制、酸化ストレス軽減、エネルギー代謝改善など)が複合的に作用すると考えられています。心腎連関の治療において、最も画期的な薬剤の一つとされています。
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●可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化薬(sGC刺激薬)
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心臓や血管の細胞で一酸化窒素(NO)の作用を増強し、血管拡張や心臓の線維化抑制などに寄与すると考えられています。特に、心不全でRAAS阻害薬やβ遮断薬を使用しても症状が改善しない患者さんに対し、心腎機能の改善効果が期待されています。
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●血管保護薬(内皮機能改善薬など)
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血管内皮細胞の損傷が心腎連関の悪化に寄与するため、その機能改善を目指す薬剤の研究も進んでいます。
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(3) その他のアプローチ
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●貧血の是正: 腎性貧血に対しては、エリスロポエチン製剤や鉄剤の投与などにより貧血を改善し、心臓への負担を軽減します。
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●骨ミネラル代謝異常の管理: CKDに伴う骨ミネラル代謝異常を適切に管理し、血管石灰化の進行を抑制します。
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●栄養療法と食事療法: 塩分制限、カリウム制限(必要に応じて)、タンパク質制限(CKDの進行度に応じて)など、心臓と腎臓の負担を軽減する食事療法が重要です。
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●心臓リハビリテーション・腎臓リハビリテーション: 適切な運動療法により、心肺機能や全身状態の改善を目指します。